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Spirit of reconstruction
ぬくもりの鐵路
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ぬくもりの鐵路

2013/1/19 Photo&Text byMORIAO

青森に住んでいると、豪雪に苛まれてつい出不精になりがちな日々も少なくありませんが、たまには一味違った温もりに出逢いに出かけたくなる衝動にも駆られるのもまた事実。
二条の軌道は、そんな欲求を満たしてくれる絶好の機会を与えてくれたのです。
今回は東日本大震災からの復興に燃える三陸の地で、真冬に抜群の心地よさを発揮する列車が走っているという話を聞きつけ、移動してみることにしました。
 
    青森⇒八戸⇒久慈⇒田野畑⇒久慈⇒八戸⇒青森
路線名 列車番号 列 車 名 発 駅 時刻 着 駅 時刻
八戸線 433D リゾートうみねこ 八 戸 10:16 久 慈 12:04
三陸鉄道・北リアス線 910D こたつ列車 久 慈 12:30 田野畑 13:20
三陸鉄道・北リアス線 911D こたつ列車 田野畑 13:35 久 慈 14:28
八戸線 448D リゾートうみねこ 久 慈 14:46 八 戸 16:44
青森から青い森鉄道の快速列車に揺られて約1時間半で八戸へ、そこから数分の乗継で待ち受けていたのは、八戸線を走るリゾートうみねこでした。
丸いおでこと大きな窓の組み合わせは、JR東日本のローカル線を走るリゾート列車に共通するデザインですが、地域ごとに独特のカラーリングを纏っていて乗車前の気分も大いに高揚させてくれると思います。
好天の下、列車は太平洋に寄り添いながらゆったりと走り続けます。
空と海が絶妙なコントラストを織り成す景色を眺めているだけで、普段から鉛色の空を仰ぎ見ながら雪かきに明け暮れる日々から思うと、気分が和らがないわけがありません(笑)
約2時間の道中を経て、終点の久慈駅に辿り着きました。八戸線はこの久慈で終着となりますが、この先は第三セクターの三陸鉄道が線路を引き継ぎます。隣のホームではにぎやかなカラーリングの車両が入線しておりました。
撮影も程々に中に入ってみると…
畳敷きの床にはテーブルが置かれ、その上にはこたつ布団…そう、列車の中にこたつを持ち込んだ「こたつ列車」なのでした。
ジョイフルトレインの定番として君臨するお座敷列車にこたつを取り入れるこの発想…厳しい冬と向合う東北を走る列車だからこそ、その存在意義が一層引き立つのではないでしょうか?
列車は定刻に動き出し、程なくすると海岸線に差し掛かります。そこで目に飛び込んできたのは不自然な雰囲気を醸しながら立ち並ぶ松の木々…震災による津波の威力を否応なく思い知らされる光景です。
更に進むと、今度は瓦礫を処理するプラントも見えてきました。列車の窓越しとはいえ、復旧・復興の最前線と向き合うことで、改めて震災の記憶と課せられた教訓が甦ってくるかのようでした。
高度な情報文化社会となったこの世の中に於いても、メディアを介してではなく現場を直視する行動こそが、事実を風化させない一番の手段ではないかと考えます。
…なんて、ブルーになってばかりもいられないので、こたつ列車の道中を楽しんでいくことにしましょう。
このこたつ列車の指定券を予約する際に、特製のお弁当の予約もお願いしており、久慈駅で受け取った弁当を広げると…アワビ、ウニ、イクラなど、煌びやかな海の幸とご対面!!
三陸の海の恵に感銘を受けながら、車内販売で調達したビールと共に夢中で箸を進めたのは云うまでもありません。
お弁当を食べ終えて列車の雰囲気を楽しんでいると、「この先のトンネルで車内演出のために照明を落とします」…とのアナウンス。
やがてトンネルの中で照明が消えたと思ったら…けたたましいうなり声と共になまはげが登場!!乗客一人一人に威嚇して歩き回り始めました(笑)
実はこのなまはげは秋田からやってきたものではなく、沿線の郷土芸能として伝わる「なもみ」と呼ばれるものだそうです。ルーツはなまはげと共通のようなので、その風貌や態度はなまはげとあまり変わりありません。
せっかくなので、勇ましい格好でポーズをとってもらいました。意外と素直ななもみさんです。
約50分の道中を経て、終点の田野畑駅に到着しました。小奇麗な駅舎の壁には地元に対する思いを綴ったメッセージが記されておりました。
震災の前から存在していたようですが、この震災を経ても力強く生き続ける、田野畑の人々の情熱も伝わってきそうで、しばし見入ってしまいました。
本来であれば、この田野畑から更に南の宮古まで線路は繋がっているはずなのですが…途中区間で今も復旧作業が続いており、分断されたままの状態になっているのです。
駅構内の先には仮設の車止めが置かれ、うっすら雪に覆われた線路は列車の往来を静かに待ちわびているようでした。一刻も早い全線再開が望まれますが、同じ悲劇を二度と繰り返さず、末永く地域のために力強く走る鉄道としてあり続けるためにも、多少の時間がかかっても着実な復旧で再起を果たしてほしいと思います。
今回はこたつ列車をじっくり楽しみたいという目的で移動しているため、折返しの久慈行に乗り続けます。帰りの列車でもなもみが「乗務」していて、先程と同じパフォーマンスで歩き回ったのですが…その後手に持っていた包丁が一枚のカードに変わり、乗客一人一人に乗車証明書を配り始めました。
荒々しい格好と、証明書を大事そうに携える仕草のギャップがなんともおかしくて、思わず記念写真をお願いしながら笑い転げておりました(爆)
紺碧の太平洋が眼下に広がる絶景のビュースポットで、列車は一時停止のサービスをしてくれました。
ここばかりは車内の雰囲気そっちのけで、食い入るように景色を堪能します。
まさに三陸の地に恵みを与えるに相応しい存在であることを再認識できましたが、時には試練の牙を向くこともまた事実。その景色の美しさに、 自然の織り成す様々な表情を思い浮かべながら眺めておりました。
再び八戸線に乗り換えて帰途に就きます。
抜けるようなスカイブルーが淡いオレンジ色に変化する黄昏時、蕪島と工業地帯を臨みながら八戸市内に戻ってまいりました。プラントの煙突から立ち上る煙に、復興へ力強く突き進む姿勢を見てとれました。

純粋に三陸鉄道とこたつ列車を楽しむつもりながら、やはり震災とは切っても切られず、ついつい意識しがちになってしまいましたが…
八戸線の車掌さんも三陸鉄道で案内してくれたアテンダントさんも、そして「なもみ」に扮したおじさんも…震災の事実を受け止めながらも力強く復興に歩み、地元と アピールするポジティブさと、「乗りに来てくれてありがとう」という感謝の念に満ち溢れていたのが印象的でした。
こたつ列車の物理的な温もりが目当てで思いついた今回の移動ですが、被災地に生きる人々の気持ちの温もりを認識できたことが何よりの収穫だったと思います。
この経験を糧に、旅行を通じて経由地や目的地の見聞を広めるだけでなく、そこに生きる人々の気持ちに自然体で触れていく機会をもっとつくっていきたいです。

 
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