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Feeling!! The South Wind
あの日、ロマンスカーで。
新春乗り放題エボリューション'07
のぞみとゆかいな(?)私鉄達
Spirit of reconstruction
ぬくもりの鐵路
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第4部:南の風を感じて

ホームの発車案内に限らず、車両の方も「博多行」であることを示しています。
但し、これらは接続特急の行先別に変更するもので例えば接続特急が熊本止だった際は新幹線の方も熊本の表示を出して走ります。
新八代があくまで「終着駅」でないことにちょっとしたコダワリを持っているような、どことなく九州新幹線鹿児島ルートの完全版のプレビューを見させられているかのような錯覚に陥ります。
車内に入ってまいりました。実は800系の車内に入るのは2度目だったりします。
私と800系車両との初対面は、昨夏川内の車両基地で行われた車両一般公開のときということで、それ以来約半年ぶりになります。
純白のボティとは正反対なデッキ周りのダークな色使い、日本の伝統工芸をモチーフとした柿渋色という色で統一されているそうです。
常識的に考えて、公共のスペースでは明るさを出そうと白色系の色使いが用いられ続けてきましたが、それを真っ向から覆し、新しい価値を見出そうしていているあたり、さすがであります。ドアの向こう側は、いよいよ客室です。
ダークなデッキ周りから一変し、客室内はベースとなった700系車両の雰囲気が強く残っております。天井周りや荷物棚、妻面などは700系を髣髴させ、飴色に光る室内はかのひかりレールスターのサルーンシートそのものだったりしますが、そういった中で800系らしさを前面に押し出し、オリジナリティを追求したのが、この座席です。
設計段階から、客室内で座席が浮いている感覚を出そうとしたそうで、大柄な割には軽快な感じも受け止められるところです。
余裕ある2+2列配置の座席は、なんと普通車として設定されているもので、ひかりレールスターの様な重圧感は無いものの、通常の座席に比べると非常にゆとりを感じさせる造作が特徴的です。環境への配慮とデザインコンセプトの一環として取り入れられた山桜の木材をふんだんに用いた座席は、モダンリビングの要素も感じ取れるわけですが、そこでとどめておかず、シートの表皮であるモケットには高級感溢れる西陣織が施されております。この柄が、モダンな「和」に適度な華やぎを与え、腰掛ける乗客の心を豊かにしてくれるのは間違いなさそうです。
この座席の感触を味わっていると、程なくして列車は定刻に鹿児島中央駅を発車しました。流れ行くホームを注視していると、ホームドアの越しに人波が絶えず新幹線目がけて熱い視線を送ってきます。
まるで新幹線をわが子のように可愛がるかのような優しい眼差しを送っている老人もいれば、乗客に向かって手を振りながらも羨ましさを強調しているかのごとく、目に力を入れて見つけている親子連れなど、発車していく新幹線を見送る表情は様々です。
期待の度合いを認識させられました。
在来線の885系車両で用いられた扇形のインアームテーブルにも山桜が使われています。耐久性に優れ、質感も良好、取付金具に刻まれた「800」のロゴがなんともニクイ演出だと思いませんか?
さらに、ロールブラインドにも木材を使用しているのが客室の特徴に一つに挙げられます。遮光性と視認性をめぐって、開発時に激しい議論が交わされた部分と聞いておりますが、絶妙な設計で通常の布地のカーテンと変わりない効果を発揮しているんだそうです。新幹線の設計ともなると、とかく車両を取り巻く素材面で様々な制約があると聞いたことがありますが、真剣な遊び心が随所に盛り込まれた800系車両は今後の設計のあり方に良い意味での影響を与えてくれる意欲作だと思いました。
800系のコンセプトの一環である、「日本であり九州である」がギュッと凝縮された部分がこの化粧室周りです。なんと、カーテンではなく縄のれんの採用となりました。しかも、この縄のれんが九州・八代産のい草を使った伝統工芸品である点がコンセプトの所以となっていたりします。デザインのアクセントにとどまらず、抗菌・消臭面にも優れる実用的なメリットも兼ね備えており、800系のデザインをプロデュースしたドーンデザイン研究所の細かい部分の作りこみにも妥協を許さない姿勢が伝わってきました。
公衆電話スペースは885系でも採用されている布地の暖簾がかけられました。
つばめロゴと電話室を示すピクトグラムが日本の暖簾の伝統的なデザインを踏襲している感じで、自然さが漂うところであります。
車内探検もそこそこに、自席につくと妻面の案内表示が川内の到着を告げました。
そして、トップスピードから減速体制に入るわけですが、この減速フィーリング、ほぼ一定の間隔でショック無く減速していくのです。この感覚は東北新幹線の八戸-盛岡でも味わった、デジタルATCの効果の表れでしょうか。
改良を重ねた別バージョンとのことで聞いていましたが、効きは若干強めでも滑らかで
不快な挙動を起こさぬままブレーキングを続けていくのはちょっとした感動を覚えました。アメニティにとどまらず、技術面でも、ハードの進化は着実に進んでいることを思い知らされました。
列車は、出水駅を発車してしばらくすると、トンネルとトンネルの間から東シナ海の大海原を愛でることが出来ます。車窓を流れるのはほんの数秒間のみながら、九州新幹線の車窓のハイライトといっても過言ではないでしょう。
海沿いをなぞるように走る在来線とは違い、山岳地帯を一気に貫く新幹線は、全体の
約7割がトンネルの闇の中、そういう環境だからこそ、車窓に突如現れる「瞬間の美」がとてつもなく印象に残ったりするのです。
我々の乗り込んだつばめ48号は各駅停車タイプのスジのため、九州新幹線の全駅に停車しながら新八代を目指すようになっています。
…というわけで新水俣駅に到着しました。
ホーム上を眺めていて驚いたのが、見物客の多さです。特別なイベントなどは催されていないものの、鹿児島中央駅同様に列車には乗らずホームで見送る人の数が非常に多いのが印象的でした。
車内の方は、自由席に余裕があったものの、指定席は団体客を含めて程よく埋まっている感じです。全員が新八代を目指すわけではなく、
駅間の利用者が意外に多いのも目に付きました。
約50分間にわたる、九州新幹線つばめの旅路も遂に終盤です。新八代到着のアナウンスが流れる頃、列車は球磨川の真上を横切っておりました。
球磨川といえば肥薩線が川沿いに寄り添いながら走っており、清流の美しさを楽しむことが出来たものですが、新幹線では肥薩線とはまた違ったアングルでその美しさに出会うことが出来るのです。超高速で流れる瞬間の美に触れるだけでなく、新幹線だからこそ実現した視点から眺める特別なパノラマが、今までに無かった独特の旅情を創出していくのではないでしょうか。
新八代駅に到着、そしてホームの向かい側には、既に787系の特急リレーつばめがスタンバイしておりました。新幹線ホームに在来線の線路を引っ張って乗り入れさせる「同一ホーム乗換」というシステムのおかげで、階段の昇り降りなどで煩わしさのあった乗継が随分と簡単なものになりました。おかげで標準の乗り継ぎ時分はたったの3分、一息入れる暇もありません(笑)
到着直前にあらかじめ先頭車付近で降りるように構えていた私は、787系と800系の顔合わせで慌しさがピークに達したホーム上で、時計を気にしながらカメラを構えるのでした(^_^;;;;
ようやく座席に落ち着いたところで、新幹線つばめから乗り継いだ特急リレーつばめでの更なる北上が始まります。
新幹線ホームを発車した列車は、新幹線のホームからアプローチ線を通って在来線へ合流します。
車窓からは、新八代までで途切れてしまった新幹線の高架橋が佇んでいるのを確認できました。どこかしら寂しげに佇む様子から、全線開業となる博多延伸に対する恋しさがひしひしと伝わってきました。
リレーつばめの車内です。前日まで運転されていた特急つばめの車内と同一になっています。この列車の登場に先駆ける形で、7両編成の787系は全てリニューアルが終わってしまっている状態なので特急つばめ時代と比較して違和感が全く無い状態でも無理なかったりするんですが(笑)

沿線では、博多延伸に向けた新幹線工事が続けられているわけですが、着実にペースを刻んでいっている様子で、半年前と比べてかなり形になりつつある様子を認識することが出来ました。開業時期の前倒しも検討されている様子で、早い時期の完成が見込まれているようです。今出来上がった路線が一過性のフィーバーではなく、長期的なビジョンで如何様に盛り上げていくかが、その行く末を大きく左右しそうです。
…って、九州に限った話では無いんですけどね(^_^;)

新幹線の余韻を楽しみながら思いにふけっていると、すれ違う列車の多さ、駅間の短さ、そして建ち並ぶ建築物のスケールの大きさが目に付いてきます。列車はそろそろ終点の博多に近づきつつあるようです。
そして、883系や885系といったスタイリッシュな面々が出迎える中、リレーつばめはホームに滑り込みました。
新八代までの部分開業ではありながら、実に4割もの時間短縮。博多まではまだ乗り継ぎを要するものの、効果はてきめんといったところでしょうか。
改めて、新幹線の速さに感服しながら、ホームを後にしました。

…というわけで、ダイヤ改正という境界線を前後して、惜しまれつつt消え行く列車と華々しくデビューを飾った列車を一遍に味わうことが出来ました。
「欲張り!!」なんて突っ込まないでくださいね(笑)
歴史の移り変わりと対峙することが出来たこの組み合わせ、一生に一度しか経験することの出来ない旅程であるという意味でも、非常に思い出深く記憶に刻まれる旅行になったと思っています。
冒頭に於いて、私が出発前に感じたいと望んでいた、二つの風―まず、12日の西鹿児島へのラストランの南下の過程では、人数も膨らんだこともあって想像以上の盛り上がりで推移したため、良い意味でおおよそイメージとかけ離れたフィナーレとなったわけですが、これこそも列車自身が乗客に対してあって欲しいと抱いていた「楽しさ」であり、意識せずとも自然と感じることの出来る、優しさ溢れるそよ風のようなものだったのだと思っています 。
こうして思い返すことで「あぁ、心地よかった」と思えるような、そんな風を感じてきたのかもしれません。
そして、もう一つ。こちらはイメージとして描いていた通りでした(笑)とにかく、乗る前からエネルギッシュ!!
そのスピードもさることながら、九州のオリジナルであることを誇示する存在感にまるで「春一番」のような強かさを受けてしまいました。鉄道史の中で由緒正しき名前として崇められていた「つばめ」という名前に、新しい歴史を刻む上でも、九州新幹線は期待していた以上に相応しい存在であることを認識することが出来ました。時間の経過を忘れさせる楽しい列車から速さを前面に押し出した列車へと格好に様変わりしてしまいましたが、逆に様々なかたちで伝統に様々なアクセントを付け 、引き立てていこうとしているJR九州の積極性に心が打たれるところです。
そういった部分から見出せる新しい価値観は、やはり直に乗って感じ取ることで自分なりの答えが見出せる部分だと思っております。半年前、勿体を付けて紹介できなかった理由として、やはりその価値観の何たるかを表現する力が無かったことが挙げられますが、今回は自分で実際に乗ってみて解釈しきれる部分を紹介したつもりです。

さぁ、南国の空を飛翔する新幹線つばめで、九州のフレッシュな浪漫鉄道の風を確かめてみませんか?

Feeling!!
The South Wind
第1部:終焉に寄せる宴
第2部:「4代目」永遠に
第3部:翔びたつ日
第4部:
南の風を感じて
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